二. 月見草
寺田寅彥
? 那是我上高中時,住在寄宿舍那年夏末的事情?!疤炝翢o?!笔莿傞_始睡在寄宿舍二樓記住的一句話。經常被睡相不好的鄰舍男孩欺負吵醒,時鐘才指向四點多。夜里,半開著的明晃晃的寢室玻璃窗亮起了曙光,睡眼朦朧地,還覺得是在并列吊著的蚊帳中,做著新的舊的黃綠色的夢。窗戶的下框處可見扁柏高高的樹梢,從那上面,好像剛睡醒的后山在窺視著。我扔下未疊好的被褥,偷偷溜出去,下到了運動場,沐浴在寬廣的草地的露珠里,赤腳從趿拉著的士兵靴中拔出來。受驚的蚱螞拍著翅膀飛了起來,草甸周圍被小松原包圍著,邊上到處盛開著月見草花。在那草中亂踩亂踏,繞著運動場跑了一圈,這時紅火的陽光印染了鐘樓,伙食房的井臺剛開始變得朝氣蓬勃。這時,正如我在某天夜里所做的奇妙的夢。正好是在運動場,在更加廣闊的草原上,沐浴在朦朧的月光中,好像不是在現實中似的。淡淡的夜霧停留在草葉的末端,四面似乎被薄薄的絹包了起來。從哪里傳來草花似的芳香,卻不知是什么香味。從腳下朝四處奔去,連接著一大片盛開的月見草花。與我并排走著的一位年輕的女孩,臉上有著被世人認為是青白的輪廓,在月光中默默地走著。淡灰色衣服的長長袖子美麗無比,同樣也是月見草染出來的。如何會做這樣的夢,如今已無法考證。從夢幻中醒來,玻璃窗已微微發白,可以聽到蟲子的鳴叫。出了身虛汗,心如絞痛。一起來就離開被褥,下到運動場,在月見草花盛開的運動場周圍,到處跑了不知多少遍。從這以后,雖然每天早上也去運動場,卻沒有像從前那樣在這里跑步時的爽快心情了。不用說感到非常孤單,從那以后,我似乎漸漸地消減了自己的體重,沉迷于憂郁和空想之中。我的不治之癥,就是那時得的。
二 月見草
高等學校の寄宿舎にはいった夏の末の事である。明けやすいというのは寄宿舎の二階に寢て始めて覚えた言葉である。寢相の悪い隣の男に踏みつけられて目をさますと、時計は四時過ぎたばかりだのに、夜はしらしらと半分上げた寢室のガラス窓に明けかかって、さめ切らぬ目にはつり並べた蚊帳(かや)の新しいのや古い萌黃色(もえぎいろ)が夢のようである。窓の下框(したがまち)には扁柏(へんばく)の高いこずえが見えて、その上には今目ざめたような裏山がのぞいている。床はそのままに、そっと抜け出して運動場へおりると、広い芝生(しばふ)は露を浴びて、素足につっかけた兵隊靴(へいたいぐつ)をぬらす。ばったが驚いて飛び出す羽音も快い。芝原のまわりは小松原が取り巻いて、すみのところどころには月見草が咲き亂れていた。その中を踏み散らして広い運動場を一回りするうちに、赤い日影が時計臺を染めて賄所(まかないしょ)の井戸が威勢よくきしり始めるのであった。そのころある夜自分は妙な夢を見た。ちょうど運動場のようで、もっと広い草原の中をおぼろな月光を浴びて現(うつつ)ともなくさまようていた。淡い夜霧が草の葉末におりて四方は薄絹に包まれたようである。どこともなく草花のような香がするが何のにおいとも知れぬ。足もとから四方にかけて一面に月見草の花が咲き連なっている。自分と並んで一人若い女が歩いているが、世の人と思われぬ青白い顔の輪郭に月の光を受けて黙って歩いている。 薄鼠色(うすねずみいろ)の著物の長くひいた裾(すそ)にはやはり月見草が美しく染め出されていた。どうしてこんな夢を見たものかそれは今考えてもわからぬ。夢がさめてみるとガラス窓がほのかに白んで、蟲の音が聞こえていた。寢汗が出ていて胸がしぼるような心持ちであった。起きるともなく床を離れて運動場へおりて月見草の咲いているあたりをなんべんとなくあちこちと歩いた。その後も毎朝のように運動場へ出たが、これまでにここを歩いた時のような爽快(そうかい)な心持ちはしなくなった。むしろ非常にさびしい感じばかりして、そのころから自分は次第にわれとわが身を削るような、憂鬱(ゆううつ)な空想にふけるようになってしまった。自分が不治の病を得たのもこのころの事であった。